糖質制限食はダイエット目的だけでなく、健康管理の方法として一般の人にも広まっている食事法です。
しかし、糖質制限に失敗する女性が続出しています。
かくいう私も、過去に糖質制限ダイエットをして失敗した人の一人です。
はじめのうちは調子よく2kgくらい体重が落ちたのですが、
2〜3ヶ月で体重は落ちなくなり、運動しても、食べなくても痩せない身体になってしまいました。
どうしてなのでしょうか。
糖質制限でダイエットを成功させるには、
糖質制限に向いている体質・または身体のスペックを持っていることが重要です。
このことを知らずにむやみに糖質制限をしてしまうと、特に女性は重大な不調を招くことになりかねません。
糖質制限をしている時に身体の中で起きている痩せるメカニズムはこちらで解説しました。
この記事では、糖質制限のダイエット効果を得られる体質かどうかを見極めるヒントをお伝えします。
目次
糖質制限が向かない人の特徴
こちらの記事をお読みくださった人はお気づきの人も多いと思いますが、糖質制限を成功させるには『糖新生』と『ケトン体回路』がうまく機能することが重要です。
しかし、この糖新生とケトン体経路を使うには、身体の代謝経路が整っていることが条件です。
私の見解ですが、糖質制限が向かない人は6パターンあります。
- 身体に脂肪がもともと少ない人
- 胃腸の消化吸収力が弱い人
- 脂肪酸代謝がうまくいかない体質の人
- 副腎の機能が低下している人
- 鉄欠乏性貧血の人
- 妊娠に備える30歳前後の女性
この6つのパターンについて詳しくご説明します。
⒈身体に脂肪が少ない人
もともと体脂肪が少ない人は、エネルギーに変換できる材料が少ないということ。
身体にある脂肪とは、皮下脂肪・内臓脂肪・コレステロールなどです。
そんな人が糖質を減らし、さらにエネルギー源を失ってしまうと、身体は自分の筋肉を分解してエネルギーに変えます。
糖質制限し始めて間もない頃は「糖新生」をしていますが、ある程度のところまでくると、骨格筋は減らないようにストップがかかり、「ケトン体回路」に切り替わります。
しかし、もともと体脂肪が少ない人は脂肪をエネルギーに変換できないため、ケトン体回路に切り替わらず自分の筋肉を分解し続けてやせ細ってしまうことがあります。
筋肉が減ると基礎代謝が落ちます。熱の産生も減り低体温でむくみやすくなります。
糖質制限でダイエットしたつもりが、代謝が落ち太りやすくなる。
これは本末転倒です。
実は、もともと脂質代謝が得意でなくて、コレステロールが低いような女性にこのタイプの失敗が多く、特徴として普段からエネルギー不足で不調を感じてることが多いようです。
2.胃腸の消化吸収力が弱い人
糖質制限食をすると、エネルギー不足にならないように自然と脂質とたんぱく質の量が増える食事になります。
しかし、そのタンパク質と脂質の消化・吸収には『胃酸』『消化酵素』『胆汁酸』の3つの分泌がしっかりできる身体であることが重要です。
胃酸が出ることによって膵臓が刺激され、消化酵素が分泌。タンパク質をアミノ酸に分解し腸で吸収できるようにします。
胆汁酸が脂肪を乳化することで身体で利用できるようになります。
要は、この3つがしっかり分泌されない人は、タンパク質・脂質をエネルギーにできません。
『胃酸』『消化酵素』の原料はタンパク質です。
『胆汁酸』の原料はコレステロールです。
なので、
- もともと食事の内容が偏っていてタンパク質不足がある人
- ストレスが多くて胃腸が動かない人
は消化に十分な酵素が分泌されていない可能性があります。
コレステロールが少ない人や、コレステロールがうまく利用できていない人は胆汁酸が出ていないかもしれません。
胃がもたれる人、お肉を食べるとお腹が張る人、油物で下痢する人は向かないのです。
サプリメントにしろ食事にしろ、栄養をたくさん摂っても、吸収する器官である胃腸が弱ってると素通りしてしまいます。なので、胃腸機能が低い人は、糖質制限をしても食事からエネルギーをつくれないため、体調を崩すのです。
3.脂肪酸代謝がうまくいかない体質の人
これは遺伝的な要因になってしまうのですが、体質的に脂肪の代謝がうまくいかない人(脂肪酸代謝異常)がいます。
栄養療法を行うクリニックで調べることができるのですが、このタイプの人も脂肪をエネルギーに変えることが苦手です。脂質代謝に異常がある人は、『低脂肪高炭水化物』の食事が適切となるため、糖質制限はしないほうがいいのです。
脂質をエネルギーに変えられない人が糖質制限をしてしまうと、血糖値が下がりすぎてしまい低血糖症を起こしてしまいます。
糖質を抜くと具合が悪くなる人は、糖質制限をしないで下さい。
低血糖症の症状・対策についてはこちら▼
4.副腎の機能低下している人
糖質の供給が減った時に、人は肝臓で糖新生をして血糖値を安定させます。
この糖新生を促進するホルモンが、副腎から分泌されるアドレナリン・ノルアドレナリン・コルチゾールという話はこちらの記事でお話ししました。
しかし、長年のストレスによりこの副腎の機能が低下している人(副腎疲労)は、それらのホルモンの分泌が低下していて、糖新生がうまくいきません。結果、糖質制限してしまうと血糖値が保てなくて低血糖症になってしまうのです。
- 倦怠感
- 朝が起きられない
- 不眠
- 不安・イライラ
- うつ症状
- 生理痛やPMSの悪化
- 性欲の低下
- 甘いものがやめられない
- 記憶力の低下
などの症状がある人は副腎疲労がある可能性大。糖質制限をする前に、副腎を癒し機能を改善する対策が必要です。
私の副腎疲労対策についてはこちら。
5.鉄欠乏性貧血の人
貧血がある人は糖質制限NGです。
日本人で月経のある女性は、自覚がなくても潜在的に鉄分が不足している可能性が高いので注意。
特に月経量の多い人、子宮筋腫や内膜症がある人、妊娠・授乳中の人は鉄分が不足しています。
なぜ貧血があると糖質制限が向かないか。
それは、人間は鉄がないとエネルギーを生み出せないから。
人間は①糖質からエネルギーを生み出す回路と、②酸素を使ってエネルギーを生み出す回路があります。
(詳しく知りたいマニアックな方はこちらの記事がとてもわかりやすいと思います。)
②酸素を使ってエネルギーを生み出す回路には鉄が必要不可欠なのですが、鉄不足がある人は材料不足でエネルギーを十分に作れません。貧血のある人が倦怠感、めまい、疲れやすいのは、このエネルギーがうまく作れない状態にあるからです。
そんな人は、糖質からエネルギーを生み出す回路に頼らざるを得ないのですが、ここで糖質制限をしてしまうとエネルギー不足で動けなくなってしまいます。
私が女性に対してむやみに糖質制限をお勧めしない理由は、男性に比べ圧倒的に貧血の人が多いからです。
甘いものがやめられない・空腹が耐えられない女性は、この鉄不足が原因で糖質のエネルギーに頼っている場合があります。
- むくみやすい
- 疲れやすい
- 甘いものがやめられない
- 胃が弱い
- 冷え性
これらは鉄不足で起こる症状です。
さらに、子宮筋腫や内膜症で経血が多い人は鉄不足の可能性が高いです。
こんな症状がある女性は、糖質制限をすると反動で過食衝動を起こしやすくなります。
6.妊娠に備える30歳前後の女性
女性ホルモンのピークは28歳前後、エストロゲン・プロゲステロン共に分泌量が多い時期です。
その中でもプロゲステロンはインスリンの効きを悪くすることで糖質への欲求を高め、妊娠に備えて脂肪を蓄える働きをします。
このプロゲステロンは、排卵日〜生理前に分泌が増えます。
言い換えれば、子供を育てるため本能的にエネルギー源である糖質を要求しているということです。
そんな時期に糖質制限してしまうと、「あれ、この母体糖質入ってこないから脂肪蓄えられないじゃん。赤ちゃん育たないし母体としては危険な状態だね!」とカラダは勘違いするわけです。
そうすると身体は飢餓状態と勘違いし、身体を省エネモードに切り替えてしまう可能性があります。
身体が飢餓に対する危機感を感じ代謝を下げてしまうのは、甲状腺機能低下による生体の反応です。
ほかにも、糖新生や脂質代謝がヘタだったり、鉄を必要とするエネルギー回路をうまく使えない女性が糖質制限をした場合。この時も身体はエネルギーを生み出すのに必要な栄養が不足していると感じ、省エネモードに切り替えてしまう可能性が高くなります。
甲状腺機能が低下してしまうと、女性は妊娠できない身体になってしまいます。
甲状腺機能低下と不妊についてはこちら▼
おわりに
- 『糖質制限したら、体調が悪い』
- 『疲れやすくなった』
- 『胃もたれがする』
- 『お腹が張る・便が臭う』
- 『生理が止まった』
- 『運動しても痩せない』
- 『太った』
そんな人は、糖質制限が合う体質なのかどうか、一度立ち止まってみましょう。
もし、糖質制限で痩せたとしても、長く続けると、今度は少しの糖質でも過剰に反応しやすくなり、インスリンの感受性が狂ってしまう弊害が起こることがあります。
糖質制限は健康目的にしてもダイエット法目的にしても、一時的な対症療法です。
健康になるつもりが、不健康の扉を開けている可能性がないか。
流行りの健康法に乗ってしまう前に、自分の身体をよく知ることが大切です。
