なぜ、婦人科疾患の原因はなかなか言及されず、治療は対症療法ばかりなのか。
その背景には
- 命を脅かすほどの疾患でないこと
- ホルモンを止めてしまえば症状が軽減・進行抑制できること
- 薬ありきの日本では、効果を上げる薬の研究はされても、根本原因を改善する論文が出にくいこと
こんな要因があるのではないかと思います。
子宮筋腫が大きくなるから“排卵を止める”。
子宮内膜が増殖するから“エストロゲンを止める”。
筋腫ができる原因にも、エストロゲンが過剰になる原因にもアプローチしないのが西洋医学の特徴と言えるかもしれません。
婦人科疾患は閉経するまで続く可能性のある疾患です。
根本原因に辿り着かない限り、症状が辛ければ薬物療法を続けるか、閉経や子宮を失うまで進行する可能性のある病態です。
近年は初潮の低年齢化もあり、10〜20代の若年層でも婦人科疾患をもつ女性が増えました。
子供を産みたいと思う頃には、症状が重くなるのに十分な年月が経っています。
きっと、不妊に悩む人も多くなるはず。
しかし、若い時からピルを飲み続けることでしか、疾患の進行を防ぐことはできないのでしょうか。
ホルモン療法には副作用があります。
辛い症状の緩和や進行を止めるには効果の高い方法ですが、根本の解決にはならず、薬をやめたら症状が戻ってしまいます。
婦人科疾患の根本原因の多くは、ホルモン代謝異常によるものです。
栄養療法は、その根本原因にアプローチできる唯一の方法です。
目次
命に関わらないから、経過観察でいいのか?
婦人科疾患は、命に関わるほどの病態でない限り、症状が軽ければ診断されても“経過観察”。
定期検診で悪性化していないか確認する、ということが多いのではないでしょうか。
しかし、子宮筋腫や子宮内膜症は月経のたびに病状が進行する疾患です。
子宮筋腫が半年後にはひと回り大きくなっていた……という話も聞いたことがあります。
筋腫・嚢胞があっても根本原因にアプローチしないため、改善することは少なく、生理のたびに少しずつ成長してしまう人がほとんどです。
- 筋腫がいつの間にか大きくなっていて、子供ができなくなっていた
- 若いときは一度自然妊娠したけど、2人目ができない
- 出血・生理痛がひどくて、鉄剤と痛み止めがやめられない
- ピルを何年も飲んでいる
- 嚢腫があって、排卵障害があるから誘発剤を飲んで妊活しているが結果が出ない
10年間歯科衛生士として関わってきた女性の患者さんの中に、そのような女性は少なくありませんでした。
しかし、本人の中ではしょうがない事と、受け入れている人がほとんどです。
『痛みやホルモンを止めること以外に、根本を改善する方法はないのか』
私は、そんな疑問を抱いてきました。
一般的に行われているホルモン療法
婦人科疾患の治療は、『偽閉経療法』『偽妊娠療法』により排卵を止める、またはエストロゲンの分泌を抑制することにより、症状の緩和や進行を防ぐ方法が主流です。
- 低用量ピル…排卵を抑制し、月経を止める(偽妊娠)
- プロゲスチン製剤…排卵を抑制し、月経を止める(偽妊娠)
- GnRHアゴニスト…脳下垂体からのホルモン分泌を抑制し「エストロゲン」の産生を低下させる(偽閉経)
- ダナゾール…男性ホルモンを投与することで「エストロゲン」の産生を抑制する(偽閉経)
これらはすべて薬物による対症療法です。
無理やりホルモンを止める方法には、もちろん弊害があります。
副作用で血栓症のリスクが高まるなど、健康を害する可能性もあるのです。
何より、薬の投与をやめてしまえば元に戻る。
人間の身体にはホメオタシスの働きがあります。
過剰なホルモンには、受容体を減らし反応を鈍らせます。
ホルモンが急激に減れば、受容体を増やすことで、少しのホルモンにも感受性を高めるようになります。
▶︎ダウンレギュレーション ホルモンの継続的または過度な刺激により、受容体が減少し、応答能が低下すること ▶︎アップレギュレーション ホルモンの減少に伴って受容体が増加したり、感受性が亢進した結果、応答能が増大すること
例えば、抗エストロゲン剤を治療に使った乳がんが再発しやすい理由として、エストロゲン受容体の アップレギュレーションにより、少しでも環境エストロゲンが体内に入ると再発してしまうということが言われています。
このことからも言えるのは、ホルモン治療は根本治療にはなり得ないということではないでしょうか。
多くの婦人科疾患の原因はホルモン代謝異常が原因
婦人科疾患の原因の多くは、ホルモン代謝異常によるホルモンバランスの乱れです。
現代ではエストロゲンが過剰になる要因が多く存在します。
環境エストロゲンへの暴露、栄養不足、炎症が、エストロゲン過剰になる原因です。
それらの要因を一つ一つ取り除き、ホルモンを正常なバランスに近づけることが、根本治療だと私は思います。
ホルモン異常の根本にアプローチする
栄養療法による根本原因に対するアプローチは、生活習慣を変えることから始まります。
薬物療法と並行しながら十分に実践できます。
①内分泌撹乱物質(環境エストロゲン)をできるだけ体内に入れない
②炎症体質を改善する…腸の炎症、皮膚の炎症、歯周病、肥満を解消する
③エストロゲンの代謝を活性化する…代謝酵素の活性、肝機能向上によるエストロゲン代謝促進
この3つを意識した生活を送る事で、徐々にエストロゲン過剰状態を改善し、正常なホルモンバランスに近づいていけると考えます。
まずは食材を選ぶことから
ホルモン剤たっぷりの牛肉や牛乳を控えること
安い輸入牛や脂肪の多い牛肉には、早く太らすために、ホルモン剤が投与されます。
お乳を出す乳牛にもホルモン剤が使われます。日々の牛乳の摂取はあまりおすすめできません。
それらの摂取が多いと、自前のホルモンではないホルモン(環境エストロゲン)が体内に蓄積してしまいます。
おすすめなのが、牧草のみで飼育されたグラスフェッド牛。少し高いですが、とっても美味しいです。
薬を飲み続けることよりも有意義なお金の使い方ではないでしょうか。
無農薬野菜を選ぶ。または、よく洗う。
農薬も環境エストロゲンの一つです。
残留農薬を洗い流すのに、専用の野菜洗剤を使うことも良いでしょう。
無農薬野菜を買えるのであれば一番です。品質にこだわった農家さんが多く、ビタミンやミネラルなどの栄養価も高いはず。野菜を選ぶことは健康を選ぶことです。
大型魚の頻度は控えめに
水銀などの重金属も、環境エストロゲンです。
特に食物連鎖の頂点に位置する大型魚は、水銀の蓄積が多い。
マグロ、クジラ、ブリやタイなどの大型魚の食べ過ぎは、エストロゲン過剰の原因になり得ます。
プラスチックの容器のまま温めない
コンビニ弁当やお惣菜。プラスチック容器のまま温めてませんか?
ビスフェノールA(樹脂の原料)は、合成エストロゲンの 1 つとして研究されていたこともあるプラスチックの材料です。水・食品の容器や、壊れにくいため哺乳 瓶や歯科材料にも使用されています。
これらは酸性や高温の液体に接触すると溶け出す事がわかっています。
プラスチック容器に温かいものを入れない、温めるときはお皿に移す。これだけでも気をつけて欲しいと思います。
お酒はたまにの楽しみに
エストロゲンは加水分解され、肝臓で代謝されます。
肝臓がアルコールの解毒に追われていたり、脂肪肝になり肝機能が落ちていると、エストロゲンの代謝が滞ってしまいます。生理前の不調に悩まされている人も、お酒は特別な食事をするときの楽しみにとっておきましょう。
終わりに
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープなど
婦人科疾患をもつ人が現代にはかなり多いと感じます。
その背景には、農薬たっぷりの野菜、ホルモン剤漬けの牛肉、水銀への暴露、プラスチック製品の可塑剤など、環境エストロゲンを体内に入れる機会が増えたことも、大きく関係しているのではないかと思います。
しかし、日本の医療の現場では対症療法が主流で、婦人科疾患になる根本原因にアプローチすることが少ないのが現状です。
薬物療法は、辛い月経痛の軽減や、妊娠を希望する人に、短期で使うことはとても有効だと思います。
しかし、進行する限り閉経まで、または子宮を失うまで薬物に頼らなければならないのでしょうか。
栄養療法は、薬物療法のようにすぐに症状が止まるということはありません。
しかし、長い人生を考えると、根本原因にアプローチし、体質を改善することは決して無駄なことではないはずです。
食べるものを選び、食べないものを決める。
全てを完璧に排除できなくても、少しずつ要因を取り除いていく。
それだけで、変わるものもあるのではないでしょうか。
実際、私は生理痛がなくなりました。
身体が変わると、人生が変わり、運命も変わります。
これから妊娠を希望する女性や、婦人科疾患の苦しみから解放されたい女性の
少しでもヒントになれば幸いです。
