妊活中の女性や妊婦さんに必ずっと言っていいほど薦められる『葉酸』の摂取。
しかし、葉酸サプリなどを闇雲に飲むのはちょっと待って。
なぜなら、葉酸をうまく吸収・代謝できるかどうかには遺伝的な『体質』があるからです。
葉酸にも種類があり、うまく葉酸を代謝できない女性が、葉酸サプリを選ばず過剰に摂ってしまうと、葉酸の蓄積で健康被害のリスクが高まることがあります。
最近、妊活中の友人が増え、『葉酸サプリ』について聞かれる機会が増えたので、摂取量、食事からの摂取の仕方、サプリメントの選び方についてまとめました。
ここでは、婦人科でも教えてくれない、でも妊活女性や妊婦さんにぜひ知っておいてほしい、『葉酸』の働きと摂りかたについてお話しします。
妊婦さんに葉酸の摂取が推奨される理由
葉酸が重要な理由は、葉酸がDNA合成に重要な役割を果たすためです。
妊娠初期は、赤ちゃんの細胞分裂が活発で脳や脊髄(せきずい)などの重要な器官が形成されます。
妊娠初期において葉酸が不足すれば、胎児のDNA合成がうまく出来ないので細胞分裂がうまくいきません。そうすると、器官形成がうまくいかずに二分脊椎になりやすい、ということから、妊活中の女性や妊婦さんには葉酸の摂取が推奨されてきました。
こうして、葉酸を加工食品に添加したり、サプリメントで摂ることで、DNA合成の問題は解決し、二分脊椎は減少しました。
厚生労働省が示す指標としては、妊娠中の女性や妊娠を希望する女性は、妊娠1ヶ月以上前から3ヶ月の間に、サプリメントや栄養補助食品から 400μgの葉酸摂取が望まれると示しています。
非活性型の葉酸(folic acid)と、活性型の葉酸(folate)
葉酸サプリメントの原料は非活性型の葉酸(folic acid)と、活性型の葉酸(folate)があります。
日本で売られている葉酸サプリメントは非活性型の葉酸(folic acid)です。
緑黄色野菜など食品に含まれる葉酸は、活性型と非活性型の両方が含まれています。それに対して日本のサプリメントの葉酸は、すべて非活性型です。非活性型の葉酸が活性化されるためには、いくつもの過程が必要です。
その活性化を行う酵素や補酵素が十分でなかったり、うまく働かない場合、活性型葉酸は十分つくられず、未活性の葉酸が体内にたまってしまいます。
非活性葉酸のサプリメントを摂った女性の体内では、血液中で葉酸を運ぶFBP(Folic Binding Protein, 葉酸輸送タンパク)が激減することがわかっています。非活性型の葉酸は活性型の葉酸が細胞に入るのを邪魔したり、酵素DHFRの機能を低下させることも確認されています。
Am J Clin Nutr. 2009 Jan;89(1):216-20.
つまり、葉酸の活性化がうまくいかない人が、日本の葉酸サプリメントを摂取すると、活性化葉酸の働きも邪魔されてしまう恐れがあるのです。
日本人では46%がMTHFR遺伝子変異
葉酸の活性がうまくいかない人がいるということについて説明します。
非活性型の葉酸は、体内で活性型の葉酸に変換されます。
このとき必要になるのが「MTHFR」という酵素です。
しかしながら、遺伝的にMTHFR酵素の活性が悪い人がいます。
アジア人でおよそ4割、日本人では46%がMTHFR遺伝子変異があることが分かっています。
MTHFR遺伝子に変異があり、MTHFR不活性の人は、非活性型の葉酸を活性型に変換するのが下手です。
前述した通り、そんな人が葉酸サプリで非活性型葉酸をたくさん摂取してしまうと、変換できなかった葉酸が体内に蓄積し、活性化葉酸の働きも邪魔されてしまう恐れがあるということです。
(活性型葉酸が不足すると、ホモシステインからメチオニンへの変換が滞り、「ホモシステイン」過剰になります。これが心筋梗塞、動脈硬化の原因になったりします。)
葉酸サプリで胎児のDNA合成はうまくいっても、その他の代謝で不備が出てしまうのです。
このことを踏まえて、私が妊活中の女性や妊婦さんのにお勧めしたい葉酸の摂取方法についてお伝えします。
葉酸の食事からの摂り方
ここからは私の個人的な見解ですが、葉酸は食事からの摂取が一番と思っています。
自分の遺伝的要因なんて、検査をしてみなければわかりませんしね。
食品中の葉酸はFolateですし、過剰や代謝においても心配ありません。
葉酸が多く含まれる食品 【野菜】モロヘイヤ、春菊、枝豆、ブロッコリー、ほうれん草、グリーンアズパラガス、芽キャベツ 【動物性】鶏レバー、牛レバー、豚レバー 【その他】納豆、アボカド 葉酸の多い食品一覧:栄養andカロリー計算
野菜から摂る葉酸は、収穫から時間の経過とともにどんどん含有量が減っていきます。
葉酸は熱や水に弱く、調理過程で破壊されやすいので、加熱が必要な野菜は蒸すか、スープにすると水に溶け出した葉酸も余すことなく摂取できます。
ブロッコリーとアスパラ、玉ねぎとベーコンを具にした豆乳やトマトスープを私はよく作っています。
食品に含まれる天然の葉酸は加熱調理や胃酸によって約50%もの葉酸が失われてしまうと考えられています。
いろんな食材を組み合わせて摂取する工夫が必要です。
ほうれん草・グリーンアスパラガス・春菊は60gで約120μg前後、納豆1パックで約60μgの葉酸が含まれるそうです。しかし、吸収できるのはそのおよそ半分ということ。
手取り早くレバーを食べてしまえば、一食分50g程度で約650μg。約300μgの葉酸を摂取できてしまいます。
葉酸サプリについて
しかし、実際には忙しくて食事を作っている時間がない、料理が苦手、新鮮な野菜を十分摂るのが難しいという人もいると思います。レバーを毎日食べるわけにもいきません。
妊娠中は1日400μgの摂取が推奨されていますが、毎日食事で補うのは実際のところ難しいと、私も思っています。
つわりで食事が摂れないという人もいますしね。
そんな人は、サプリメントで補充したいところですが、量と種類に注意が必要です。
日本で販売されているのは合成葉酸(非活性型:folic acid)ですので、私は活性型葉酸を含むビタミンB複合サプリメントをiHerbから購入しています。
量は最小限の400μg(mcg)まで。活性型は摂りすぎも副作用の危険があります。食事からも多少摂取している分もあると思うので十分かと思います。
Thorne Research, ストレス B-複合体, 60 ベジカプセル
1カプセルに200μ(mcg)の活性化葉酸が含まれています。(folate /5–MTHF :L–5メチルテトラヒドロ葉酸として)
朝晩の計2カプセルの摂取で400μg摂れます。
おわりに
葉酸サプリが悪影響を及ぼしそうな人は、葉酸の活性化がうまくいかない人です。
必ずしも『非活性型葉酸のサプリメントが悪い』という訳ではありません。
実際に、加工食品への葉酸の添加やサプリメントでの補給によって、現代では二分脊椎はかなり減少しました。胎児のDNA合成には紛れもなく必要です。
しかし、アジアではMTHFR遺伝子変異が多く見られ、妊婦さんの中には非活性型葉酸を活性化できずに蓄積してしまう人もいるということです。
そのような人でも、非活性型は400μg以上摂らなければ問題ないとされていますが、長く摂るなら活性型を選ぶ方がいいかも知れません。赤ちゃんにもお母さんの身体にも必要な葉酸の摂り方と安全な量をお伝えさせていただきました。
参考になれば幸いです。
MTHFR遺伝子を調べることもできます。気になる人は検査をしてみてもいいかもしれません。
